【取り組み名】“地球のチカラ”✕“親子の熱気”が原動力のゼロエミッションカーでLet’s Drive Together Towards SDGs
概 略
少年・少女のドライバーが、「地球のチカラ(重力)」だけで走るクルマ「ゼロエミッションのソープボックスダービー(SBD)カー」で坂道を走り、その速さを競うカーレース「オールアメリカン(AA)SBD国際大会(*)」の日本本部として、国内の代表選考会開催と国際大会の参加支援を主事業に、SBD競技の普及活動を介した社会貢献を1998年から実施している。
長年のSBDの魅力を伝える活動から、日本ではまだまだ未成熟な「子どもがクルマに親しむ文化」向上の一助になるとともに、今日の、SDGsを目標とする社会における「企業イベントの雛形」となる可能性があると考え、以下の取り組みをお伝えしたいと思う。 (*)AASBD国際大会とは:1934年からはじまる世界最高峰の、子どもの重力カーレース 参照資料(関連サイト) 概_① 活動主意:https://nsbd.org/idea/ 概_② 団体概要:https://nsbd.org/brochure/ |
取り組みを始めた経緯
1998年、当時、自動車メーカー研究所に勤務していた当協会 創業者(山本君一)が、偶然手にした雑誌で、米国の子どものカーレース「SBD」記事に出会う。
子ども時代に夢中だった1960年代の米国のテレビ番組「ちびっこギャング」でもSBDをイメージさせる場面があったことや、友人と壊れた乳母車や板に滑車を取り付けて遊んだ記憶が蘇る。同時に、SBDカーの構造を知り、自動車開発に従事する立場から「これは遊びではない。子どものF-1レースだ!」と直感。日本での競技普及の道を探り始める。 ※ レースカーの魅力 何と言ってもダイレクトフィーリング「クルマを操る楽しさ・身体中で受ける路面や風の感触」が生きていること。プリミティブな感覚がきちんと残っていて、クルマと会話しながら走行できる点が最大の魅力。 またシンプルな構造で、子どもが大人の手を借りながらも自作できる点もユニークである。 もう一人の創業者(山本教子)は、学生時代からボーイスカウトやガールスカウト、また米国の子ども等のサマーキャンプ・カウンセラー、高校教諭等を経て、子どもの社会教育の必要性を強く感じていたため、AASBD国際大会が教育的な観点に立つ青少年の健全育成プログラムであることに気付く。 山本君一と山本教子は、それぞれの経験から、今日の子どもに対して良い実体験の機会になると考え、SBDの普及活動をすべく、1999年、AASBD本部がある米国オハイオ州アクロン市を訪ね、日本での開催権等を取得する。 2003年、賛同する仲間を得て、現 特定非営利活動法人 日本ソープボックスダービー協会を設立。 その後、自動車メーカーに勤める仲間等を中心に、ボランティアで主事業や普及活動に取り組み、2020年までに20回の代表選考会開催と、2019年までに19名の日本代表選手の国際大会支援を行い今日に至る。 (新型コロナウィルス感染症感染拡大のため、20年は大会中止。21年は日本の外務省の渡航禁止勧告に従い不参戦。また、21年の代表選考会は、22年3月に開催予定。) |
具体的な取り組み内容
(1)モビリティに関する課題への取り組み
1_子どもが、小さいときからクルマやトラックに親しむ機会を提供する取り組み(若者のクルマ離れ)
・年間を通じ、全国で大小様々ある自動車業界の各種イベントに参加協力している。 参照資料 (1)_① 2019年 活動実施報告書 2_親子に対し、交通安全を学ぶ機会や、家族で交通安全について考える機会を提供する取り組み ・大型トラック等を用いた死角体験とSBDモックカー(*)を用いた家族の交通安全啓発の活動を行っている。 参照資料 (1)_②【2019年_実施報告書】バンテックの大型トラックとSBDモックカーで交通安全 (1)_③【2021年_実施報告書】群馬トヨタ自動車イベント (*) モックカーとは:SBDを説明するためにオリジナルで作ったSBDカー1/10モデルの木製ミニカーキットのこと |
(2)SDGs目標達成につながる取り組み
1_ポストコロナ時代の、SDGsを目標とする社会における「企業イベントの雛形」をめざす取り組み
・ゼロエミッションカーであるソープボックスカーを用い、ジェンダーフリーかつハンディキャップフリーなSBD競技の普及活動そのものがSDGsの目標達成につながっている。 参照資料 (2)_① NPO_NSBDがサポート可能なSDGsのゴール(マトリクス図) |
(3)地域や自治体と協働・連携する地域活性化の取り組み
1_2001年から昨年12月まで継続して実施している代表選考会の開催
・毎回、大会開催地の首長に名誉会長を依頼。地域の自治体や企業・団体の後援や協力を得て実施する取り組みを続けている。 参照資料 (3)_①_a_2020 SBDナショナルチーム選考会(神奈川大会)実施報告書 (3)_①_b_2020 SBDナショナルチーム選考会(神奈川大会)大会結果(速報) (3)_② 動画紹介 ・大会P R:https://www.youtube.com/watch?v=oNHRYqjRF8A ・大会報告:https://www.youtube.com/watch?v=0KfsxTQA3Xw (3)_③ 発足以来の大会開催実績と歴代チャンピオン一覧 (3)_④ 2001-2019歴代チャンピオン紹介 2_2021年5月にスタートしたYouTubeライブ配信 ・番組名は、「presented by 日立物流 地球のチカラこぶ in 表丹沢みのげ ~ソープボックスでSDGsをめざす~」。 月1回の放送では、SBDの普及活動を主眼にSDGsを骨子に、神奈川県秦野市と秦野市観光協会の後援の下、秦野市長の応援メッセージを頂戴したり、表丹沢の自然に囲まれた「ウグイスの巣」と名付けた協会本部庭の特設スタジオから、私たちが普及するSBD競技の魅力や活動主意、四季折々の表丹沢(特に本部がある蓑毛地区を中心に)を紹介する取り組みを行っている。 参照資料 (3)_⑤ チャンネルURL:https://www.youtube.com/channel/UCgEZ-bkHOdpVQrBHX7cZKSA (3)_⑥ 神奈川県秦野市長からのビデオ応援メッセージURL:https://www.youtube.com/watch?v=e4GFQ4m-WT0&t=56s |
(4)ユーザーとして自動車を大切に取り扱い、性別や年齢に関わらず幅広い層から評価されうる取り組み
1_運転免許証を取得できない年齢層の少年・少女等に対し、免許証がなくてもハンドルできるSBDカーを用い、未来のドライバーに対して、クルマに親しむ機会を提供している。
参照資料 (4)_① レースカー(キット)の写真 2_国際大会への参加支援をとおし、子ども等の異文化交流に貢献している。 参照資料 (4)_② 異文化交流の写真 |
取り組みによって生まれた周囲の変化・効果について
1_若者のクルマ離れ
・そもそも、子どもたちにクルマへの興味喚起やレースの醍醐味を伝えたり、青少年の健全育成の一助を目途にスタートしたSBD普及は、当初はアピール力不足から評価が低く、活動が注目され難い時代が続いたが、2000年頃から言われ始めた「若者のクルマ離れ」が顕著になるにしたがい、自動車業界では子ども向けのイベントが増え、それに併せ、私たちの活動も注目されるようになった。 参照資料 効果① 活動の棒グラフ 2_モックカー(キット) ・2006年頃、SBDの説明ツールとして考案した「モックカー(*1)」の工作教室がヒットし、2008年頃からモックカーが牽引役となりSBDのイベントが増え、認知が向上した。 ・モックカーのイベントをとおし、当初の目的(SBDの説明ツール)から発展し「クルマへの親しみ」、「ものづくり喚起」、「創意工夫の喜び」を伝える役割を担っていることに気付き、この辺りにモックカー活用の可能性があると考えた。 ・また、児童生徒を対象とした 「エネルギーを学ぶ理科教材」あるいは「 STEM 教材(*2)」としても適していることが分かり、その分野にも積極的に交わり、SBD普及のフィールドを広げている。 ・地球のチカラで走る!SBDモックカーとして、実用新案を取得(理科教材:登録番号 第3162882号) ・さらには2019年、活動当初からの創業者の「クルマの本当の楽しさを伝えるには、クルマの危険な面も伝えるべき」との考えから、「モックカーキットを交通安全のお守りにした新たな交通安全イベント」を企画。 ・長野県茅野市にある蓼科山聖光寺の協力によって実現し、今日では私たちの企画に賛同する企業等とともに、「トラックを用いた死角体験とお守りモックカー工作」のイベントを積極的に開催している。 ・世界初!自分で作るクルマ型のおまもりとして、実用新案を取得(自動車型護符:登録番号 第3162707号) ・参照資料は、(1)モビリティに関する課題への取り組みで挙げた以下をご覧ください。 (1)_②【2019年_実施報告書】バンテックの大型トラックとSBDモックカーで交通安全 (1)_③【2021年_実施報告書】群馬トヨタ自動車イベント ・その他の参照資料 効果②【活用案】地球のチカラで走る!SBDモックカー (*1) モックカーとは:SBDを説明するためにオリジナルで作ったSBDカー1/10モデルの木製ミニカーキットのこと (*2)STEM教材とは:■モックカーSTEM(16:9)をご覧ください。 3_SDGs ・2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故をきっかけとする再生可能エネルギー利用への期待が一気に高まると同時に、「地球のチカラ(重力)」だけをエネルギーに走るSBDの注目度も増した。 ・さらには、気候変動がもたらすと言われる大規模自然災害や新型コロナウィルスの世界的パンデミックの結果、思わぬリスクが顕在化し、持続可能性そのものが危うくなりかねない時代であることに多くの人が気付き、子どもたちに対するSDGs教育も加速。そこに、私たちのコンテンツの活用の可能性がうかがえる。 |
最後に
ポストコロナ時代の企業PRは、今まで以上に持続可能な目標に則ったものでなければならず、イベント活動が再開された暁には、その内容はプレコロナ時代によく見かけた「人寄せ型」ではいられなくなるはずだと考える。
ゼロエミッションカーであるSBDカーを用いた私たちのオリジナルコンテンツは、新たな自動車業界のCSRとして、SDGsコミュニケーションとして、企業姿勢を応援するイベントに成り得ると期待している。 |